寒いのが大嫌いだった自分が師匠に誘われて冬山デビューしたのが今からちょうど5年前。机上講座に参加し、鷹取山でのアイゼン・ピッケルワークの練習をした後に借り物・お下がりばかりの冬山装備で立山室堂へ行ったのが懐かしい。

冬山を始めてから2年ほどは好きになれなかった。装備が多くて重いし、アイゼンをつけたりはずしたり、スノーシューに履き替えたり、グローブやアウターを小まめに調整したりと忙しい。分厚いグローブをつけているのでアイゼンやスノーシューのバックルの取り扱いに手こずり、ロープをつけるときにはカラビナにグローブが挟まる等々、初心者には身の回りのことでいっぱいっぱいで山登りを楽しむどころではなかったのだろう。

3年目の冬山。それは突然やってきた。何度目かの山行を終えた後に「あれ?楽しい!」と思った。それからは降雪や気温の変化に一喜一憂し、無雪期と同様毎週でも山へ行きたいと思う自分がいる。それは道具の取り扱いや重荷を担ぐことに慣れたというよりは、様々な登山を体験することでいろいろな遊び方ができるのを知ったからだと思う。

アイゼンやスノーシューを履いて歩いたり攀じったりする山を「冬山」または「雪山」と一口で表現するのは適切ではない。厳冬期の山は「冬山」だろうが残雪期の山は春山である。夏にだって雪渓を登って登頂することもある。雪稜を登ったり縦走するのは「雪山」かもしれないが、アイスクライミングは氷あるいは氷と雪のミックスした滝、アルパインクライミングは岩と雪のミックスした壁を登る。雪原をスノーシューで歩くのも楽しい。無雪期以上にいろいろな楽しみ方がある。

山で遊ぶのに今や「夏山」と「冬山」、「無雪期」と「積雪期」(「有雪期」と呼んだ方が適切かもしれない)といった区別がなくなり、山が提供してくれる尾根、谷、壁、それらの周辺に広がる原で一年中遊ばせてもらっている。

世界を広げてくれた5年前の今日に感謝。